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コラム:  なすび

 今年の夏は、なすびの揚げ出しにはまっています。といっても私の'はまっている'はたかが知れていて、何の油がいいか、炒めてから揚げるか、揚げた後湯通しするか、味付けは何を入れるか、そんな入り口のところで試行錯誤しているに過ぎません。はまったきっかけはこんなところです。
 今年オーブンレンジを買い換えました。結婚以来母に押し付けられた東芝の1980年製のものを使ってきました。まるで鉄の塊のその代物は、全く壊れそうもありませんでしたが、解凍の温度むらが気になりだしたのと、なんとなく電磁波が気になってきた、という理由をつけて引退願いました。ところが新しい代物は、隔世の感があり、なにやらやたらと機能が満載で、食材を入れて焼くなり蒸すなり表示のキーを押せば、程よく調理してチンと出来上がるのです。時間の設定も温度も何も考える必要がないのには驚きです。これは人類を退化させる悪党だ、えらいものを侵入させてしまったと恐れ戸惑いつつも、いつしか楽チン料理に慣らされていき、肉だの野菜だのを適当にほおり込んではお任せ料理をしていたのでした。その上、油を少量しか使わないヘルシー料理というのもなかなかのものです。
 ところがそんなある日、揚げナスをやってみたら全く上手くいかないのです。そこでむらっとやる気がよみがえり、たっぷりの油にプカプカなすびを浮かべたのでした。すぐにパリッとしてテカリのある皮と柔らかくてジューシーな理想のなすになります。それ以来はまって、なすびと油の大量消費を繰り返しているという次第です。
 年中お目にはかかるけれどやっぱりなすびは夏の野菜、なすびファンは多いように思います。なすびの産地に育った私には、当たり前すぎる野菜でしたが今となってはなつかしい故郷を思う野菜でもあります。なんでも譲ってくれる父が、なすびの漬物だけは譲らなかったこと、輪切りにしてフライパンで炒めて砂糖醤油とゴマで味付けした大量のなすびだけがおかずだった母の反乱の日。
 漬物や煮物、それぞれの家に、それぞれのなすび料理の味があるのでしょう。この夏、私の定番なすび料理が作れたらいいなと思っています。

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