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コラム:  住み手がつくる暮らしの場

 Vauban(ヴォーバン)という新興住宅地がドイツのフライブルクという小さな町にあります。

 1994年に都市計画のコンペが行われ、97年に第1期工事が始まりました。40ha の土地に5500人が暮らし、なんと7 割近くの住宅がコーポラティブ形式で建てられています。そこでは車ではなく人を優先とした道路計画があり、豊かな緑が生い茂り、市電が通り、省エネに特化した住宅が義務付けられ、老いも若きも、障害のある人もない人も一緒に働き、住み、遊ぶといった魅力的なコンセプトで溢れています。

 特筆すべきは、すべてにおいて住民による計画への積極的な参加があり、それが行政をも動かしてきたという歴史です。その母体となったのが、本物の住民参加を目指した若者が中心となって設立された市民組織「フォーラム・ヴォーバン」です。道路や緑地の計画からコーポのコーディネートまでその活動範囲は多岐にわたり、Vaubanの地区計画に大きな影響を与えました。

 中でも面白い試みの一つに「遊びの道路」と呼ばれるものがあります。道路は通り抜けができないU の字型に配置され、車は最徐行に制限されています。住宅の多くは4階建の長屋型で、玄関につながる前庭は道路(公共の空間)に隣接しているためブロック塀などを設けることは禁止され、生け垣などからなる在来種で緑豊かな前庭にすることが義務付けられています。さらに前庭と道路との間には街路樹が立つ緑地が設けられ、多様性に富んだ緑に「遊びの道路」は囲まれています。

住宅地内の約4分の3がこのような土地利用となっており、車は住宅地内にある立体駐車場に集約され、居住者が自分の敷地内に駐車場を設けることはできません。車を持たない人は、カーシェアリングを利用することにより、必要な時にだけ車を使い余分な出費を抑えることができます。ドイツ国内での自家用車の保有率は約55%であるのに対し、ここでは約17%という驚異的な数字になっています。

 本来「道」とは人やものが移動するだけの場ではなく、子どもは遊び、人と人が出会い、会話し、集い、土地との一体感を育くむ身近で社会的な交流の場であったはずです。この「遊びの道路」を例に、暮らしの自由と豊かさを得るために私たちは何を優先すべきかを、今一度考えてみるべきではないでしょうか。

 この様に道路一つを取っても革新的な計画が行われているVauban 地区ですが、日本でも我々住み手が主体的に暮らしの環境にまで参加ができる計画ができないものかと夢見ています。Vauban についてはまだまだ面白い試みがたくさんあります。

今年は是非その様な話ができる座談会を開いてみたいと思います。

山田雄斗